Case Report Award 2020
臨床には症例の積み重ねがとても重要で、一例一例の病態をしっかりと把握する中から新しい疾患概念が提案されてきました。 臨床研究の原点は目の前の患者の研究、つまり症例報告に他なりません。 症例について詳しく探究し、その成果を言語化し、症例報告（論文）として公開することは、自らの知識や理解を深めるだけでなく、類似の病態を示した患者の診断・治療の情報源としても役立っています。
当会では、症例報告に特化したオンラインジャーナル『Journal of Cardiology Cases』(JC Cases誌) に発表された症例報告（ケースレポート）の中から、毎年優れた論文を顕彰しています。
このたび、2019年1月〜12月にJC Cases誌に発表されたケースレポート114編の中から選考委員会が厳正に審査を行ない、最優秀賞、優秀賞の２編が選出されました。受章者の皆さまの今後ますますの活躍を期待いたします。
JC Cases編集委員会
委員長 山本 一博
最優秀賞
この度は大変光栄な賞を頂き、誠にありがとうございます。身に余る賞を頂き、大変恐縮しております。今回私達は、拘束型型心筋症の表現型を示した心筋緻密化障害の3同胞例を経験しました。全3例に同一の遺伝子変異を同定し、1例は病理解剖をさせて頂きました。小児の拘束型心筋症は急速に病状が進行し予後不良な経過をたどることが多いとされ、積極的に心臓移植の適応を検討することが必要とされています。今回私たちが診療に関わらせて頂いた患者さんと類似の臨床経過をたどる患者さんや同一の遺伝子変異をもった患者さんは予後不良な臨床像をたどる可能性があります。その場合には積極的に心臓移植を検討することが必要です。本論文が、類似症例の治療方針の一助となり、同様の悲劇が繰り返されないことを切に願っております。また心筋症の原因遺伝子はまだ未解明な部分もありますが、本論文が今後の心筋症の遺伝子型と表現型の関係を解明する一助になれば幸いとも思っております。この度は誠にありがとうございました。
優秀賞
この度は貴重な賞をいただきありがとうございます。現在の医局に入局してから、忙しい日々ではありましたが、様々な症例を経験し、その中で不整脈源性右室心筋症という非常に稀な症例を経験させていただくことができました。諸先生方の熱心なご指導のもとに症例報告として形にでき、さらにこのような賞まで頂戴することができ、大変嬉しく思っております。本症例は、末期の右心不全に伴い透析導入も行いましたが、透析困難症となりました。呼吸苦症状が続くなかでも、生前より死後の解剖を希望され、今後の医療につなげてほしいと言われていた症例でした。今回の症例報告が少しでも皆様のお役に立てられると幸いです。