EU諸国の中でも燦然と輝く成長経済のスウェーデンは、人口が増加を続ける開放社会であり、また欧州男女平等研究所による男女平等インデックスの第1位(2015)とされるなど、他のノルディック諸国と並んで国際的男女平等ランキングで最高の成果を挙げている。
我が国では「男女共同参画」という言葉を用いて男女平等(ジェンダーイ―クオリティ)を婉曲に表現しているが、スウェーデンにはそのような配慮は存在しない。過激なまでの個人主義とも言われる。
主に20世紀の社会運動と経済発展を背景にした政治社会と家族の変容の結果ではあるが、振り返れば古来の伝統にも連なる北欧の現代的流儀として確立した社会原理となっている。
スウェーデンにおける男女平等は、他者に不平等な関係で依存しない自律(立)の維持を究極の福祉目標とする社会の上に成り立っている。
その社会では、配偶者に経済的に依存する専業主婦は存在を許されず、対等な個人の純粋な愛情による婚姻であり離婚時も慰謝料は認められないという徹底ぶりである。税制も社会保障も20世紀後半には世帯単位ではなく個人単位に切り替えられている。
スウェーデンにおける医療も患者と医療者の自律(立)と平等の上に成り立っている。医療アクセスの困難さはなお残り、患者に優しい医療ではなく患者の我慢は変わらない。医療者のQOLを大切にして医療の質を確保する伝統は健在である。終末期の医療は実に淡泊である。
更にe-Healthの時代になり、患者中心から患者をチームの一員と位置付け患者が自分で判断する医療に変容しつつある。
こうしたスウェーデンでは医療者も男女・民族・国籍等の多様性が際立っている。5週間以上の夏休み等の勤務条件の違いもない。日本人の女性医師も活躍しているし、私が経験した全身麻酔手術の執刀医もイラン人医師であった。
もとより、その是非は別にしてスウェーデンには法律上医師の応召義務はなく、医師の判断次第とされている。
男女平等に関してスウェーデンに残された課題もある。男性以上に高等教育を受けているにもかかわらず民間企業の幹部職員や役員には女性が比較的少なく、男女役員のクオ―タ制度も国会で廃案にされるなど議論は尽きないようである。