2022年度:顕彰受賞者のお知らせ
2022年9月24日(土)に、第70回日本心臓病学会学術集会(国立京都国際会館)にて表彰式を執り行いました。受賞された先生方の今後ますますのご活躍を願っております。
栄誉賞
丹羽 公⼀郎
(聖路加国際病院 循環器内科、千葉市立海浜病院 循環器内科、
千葉県循環器病センター 成人先天性心疾患診療部)
循環器疾患の中でも認められていなかった成人先天性心疾患という分野の重要性を徐々に広げてきたものとして、このような歴史があり価値の高い栄誉賞を受賞させていただきましたことは、一臨床家としての非常な喜びであるとともに日本心臓病学会の皆様に深謝申し上げます。1970年代から小児心疾患診療を続けるうちに、患者さんが成人となり小児科領域を超えてまいりました。徐々に成人先天性心疾患診療には専門的な医師が必要と痛感いたしました。米国や英国でも始まったばかりの成人先天性心疾患を専門的にみる医師のもとで研修をいたしました。その後は、我が国だけではなく、世界成人先天性心疾患学会、アジア環太平洋成人先天性心疾患学会の理事として、この分野を広げることを進めてまいりました。多職種の方々と共同し、日本成人先天性心疾患学会を設立し、人材育成と同時に修練施設認定、専門医制度を構築しております。移行に関しても本学会を含む8学会共同で、先天性心疾患の成人への移行医療に関する提言を公表いたしました。最近ではこの分野の診療や研究が進んできており、循環器内科の一分野として広く認められてきていることを本当に嬉しく感じております。
教育貢献賞
赤木 禎治 (岡山大学病院 成人先天性心疾患センター)
この度,日本心臓病学会教育貢献賞を受賞することとなり大変光栄に存じます。これまで私個人が率先して教育に取り組んできた訳ではありませんが,現在私が力を注いでおります成人先天性心疾患診療を進めるうえで教育の重要性を認識したことのおかげだと感じております。医療の進歩で以前は治療困難であった先天性心疾患患者の多くが,成人に達する時代となりました。その患者数は国内ですでに50万人を越える状況となっております。このような成人になった先天性心疾患患者の健康寿命をさらに伸ばし,社会の中で活躍していただく機会を持っていただきたいと思い学会活動を行っております。コロナ禍の時代においても積極的な学術交流を図ろうとACHD NIGHTと名を打って隔週でウェビナーを実施いたしております。日本のみならずアジアパシフィック版にも多くの参加者を得ることができました。このような企画に全面的にご協力いただいております日本成人先天性心疾患学会の皆様に心より感謝申し上げます。さらに岡山大学病院成人先天性心疾患センターでの活動にご支援いただいております伊藤 浩先生はじめ岡山大学循環器内科の諸先生方に心より御礼申し上げます。
和泉 徹 (恒仁会新潟南病院 統括顧問、北里大学 名誉教授)
2013年以来、少子・超高齢社会における心臓病臨床の在り方について私なりの模索を続けてきました。漸く形になったかなと思ったところで、今回の受賞のお知らせ。素直に喜んでおります。高齢者の独歩(独立歩行)をまもる心臓病臨床が、傘寿者(80歳以上の超高齢者)の福音となる証が得られたとして受け止めています。如何なる心臓病であろうとも独歩がまもられた高齢者の予後は豊かです。歩行スピードがよく長期予後を指し示します。人生の終末が穏やかでありたいと願う傘寿者の最後の介入ポイントです。心臓病領域で得られた答えは高齢者一般への普遍性と妥当性をもつでしょう。高齢者の尊厳を守り、次世代に余計な負担を遺さない少子・超高齢社会づくりに叶う方策となることでしょう。今までの積み重ねはこのシナリオの妥当性を検証することに費やされてきました。これからは社会実装への挑戦として展開していくことでしょう。元気な傘寿者創生は心臓病専門医のこれからの使命と心得ます。このようなよい機会を私に与えてくれた支援者の皆様と日本心臓病学会の皆様に心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
上田賞
Assessment of biventricular hemodynamics and energy dynamics using lumen-tracking 4D flow MRI without contrast medium (J Cardiol 2021;78:79-87)
中路 康介
(京都府立医科大学 放射線診断治療学/現在:高知大学医学部 放射線診断・IVR学講座)
この度は上田賞という大変名誉な賞を授与していただき、誠にありがとうございます。査読、賞選考を担当して頂いた皆様方に感謝申しあげます。今回受賞の対象となった論文は京都府立医科大学放射線科での大学院生時代に4D flow MRI という新たな血流解析ツールを用いて、若年健常者の両心室の血流やエネルギー動態、心拍出に伴うエネルギー損失の基準値を明らかにしようとしたものです。この論文により提示できた健常者での結果により、様々な疾患の重症度やリスク判定、治療前後での効果判定や手術計画など今後の心臓病の診療、研究や血流解析において少しでも役に立つようなことがあれば、誠に身に余る光栄です。最後になりますが、この論文を記す過程でご指導いただいた先生方に厚く御礼申し上げます。今回の受賞を励みに、臨床、研究に一層精進していきたいと考えております。
優秀論文賞
Pathological and clinical effects of interleukin-6 on human myocarditis (J Cardiol 2021;78:157-165)
網岡 尚史
(岡山大学 循環器内科)
岡山大学循環器内科の網岡尚史と申します。本受賞につきましては誠に光栄に存じます。
本研究はこの数年間COVIDでも注目を集めましたIL-6と心筋炎の臨床的な関係をまとめたものになります。興味深いことに心筋炎においてリンパ球、好酸球、巨細胞と炎症細胞の種を問わずにIL-6が産生されておりました。また血清IL-6濃度は心筋炎患者の臨床的な重症度を反映しておりました。IL-6は炎症マーカーとしてのみではなく、既に関節リウマチや大動脈炎において治療標的になっております。今後、IL-6をターゲットとした治療が心筋炎のマネージメントにどのように関わることができるかが注目されます。
本研究は多くの先生方の御助力を頂きました。御指導を頂いた当科の伊藤浩教授、長きにわたり心筋疾患患者の診療にあたり検体の収集を続けられた中村一文准教授には特に厚く感謝申し上げます。
また病理検体評価、コントロールサンプルのデータ提供を快く引き受けて下さった国立循環器病研究センターの先生方の御協力は非常に力強いものでした。末筆になりますが御紹介できなかった方々も含めまして本研究に携わられた皆様にこの場を借りて感謝を申し上げます。
本研究はこの数年間COVIDでも注目を集めましたIL-6と心筋炎の臨床的な関係をまとめたものになります。興味深いことに心筋炎においてリンパ球、好酸球、巨細胞と炎症細胞の種を問わずにIL-6が産生されておりました。また血清IL-6濃度は心筋炎患者の臨床的な重症度を反映しておりました。IL-6は炎症マーカーとしてのみではなく、既に関節リウマチや大動脈炎において治療標的になっております。今後、IL-6をターゲットとした治療が心筋炎のマネージメントにどのように関わることができるかが注目されます。
本研究は多くの先生方の御助力を頂きました。御指導を頂いた当科の伊藤浩教授、長きにわたり心筋疾患患者の診療にあたり検体の収集を続けられた中村一文准教授には特に厚く感謝申し上げます。
また病理検体評価、コントロールサンプルのデータ提供を快く引き受けて下さった国立循環器病研究センターの先生方の御協力は非常に力強いものでした。末筆になりますが御紹介できなかった方々も含めまして本研究に携わられた皆様にこの場を借りて感謝を申し上げます。
Prognostic value of modified coronary flow capacity by 13N-ammonia myocardial perfusion positron emission tomography in patients without obstructive coronary arteries (J Cardiol 2022;79:247-256)
三浦 史郎
(北海道大野記念病院 循環器内科)
この度、日本心臓病学会より光栄な賞をいただき本当にありがたいです。
本研究は、最近大変注目を集めています器質的冠動脈狭窄が認められない非閉塞性冠動脈疾患(INOCA)をテーマにした論文で、その病態機序として想定されています冠微小血管障害(CMD)をGold standard の1つであります心臓PETを用いていかに適切に診断するかを議論しています。心筋血流予備能(MFR)の低下のlimitationを示しつつ、比較的新しい概念であるcoronary flow capacity (CFC)を導入することでより病態を反映した評価を行うことを可能にしています。さらに、CFCが低下している群は低下していない群に比べて有意に予後が悪いことを示し、今後の予後予想指標としての有用性も提示した論文であります。今後のINOCA診療の一助になれば幸いであります。
本研究は、最近大変注目を集めています器質的冠動脈狭窄が認められない非閉塞性冠動脈疾患(INOCA)をテーマにした論文で、その病態機序として想定されています冠微小血管障害(CMD)をGold standard の1つであります心臓PETを用いていかに適切に診断するかを議論しています。心筋血流予備能(MFR)の低下のlimitationを示しつつ、比較的新しい概念であるcoronary flow capacity (CFC)を導入することでより病態を反映した評価を行うことを可能にしています。さらに、CFCが低下している群は低下していない群に比べて有意に予後が悪いことを示し、今後の予後予想指標としての有用性も提示した論文であります。今後のINOCA診療の一助になれば幸いであります。
Case Report Award 最優秀賞
Portosystemic shunt with hyperammonemia and high cardiac output as a complication after Fontan surgery (J Cardiol Cases 2021;23:103-107)
竹蓋 清高
(国際医療福祉大学成田病院 小児科)
この度は日本心臓病学会2022年Case Report Award最優秀賞をいただき、大変光栄に思います。論文作成にあたりご指導いただいた先崎秀明先生をはじめ、実際の診療に際し貴重なご指導を賜りました沖縄県立南部医療センター・こども医療センターの佐藤誠一先生、島袋篤哉先生、ならびに診療に携わったすべての方々に、この場を借りまして心より感謝申し上げます。また貴重なご意見をいただいた査読者の先生、編集委員のみなさまに深く御礼申し上げます。そして何より担当した患者様,私を支えてくれている家族に感謝いたします.本論文では、Fontan術後の合併症として知られる高拍出性心不全と門脈体循環シャントの関連について報告いたしました。Fontan術後に合併する高拍出性心不全の病態は未解明なことも多いですが,本報告をきっかけに今後さらに知見が重ねられ、患者様へのより良い医療が提供されることを願っております。今回の受賞を励みに、日々の診療になお一層邁進して参ります。誠にありがとうございました。
Case Report Award 優秀賞
Percutaneous transseptal transcatheter mitral valve-in-valve replacement for degenerated mitral bioprosthesis: The first experience in Japan (J Cardiol Cases 2021;23:49-52)
上野 博志
(富山大学附属病院 循環器センター)
この度は、このような名誉ある賞を頂き、大変光栄に思います。
コロナ禍で世間が騒ぎ始めた2020年1月、患者さんが紹介状を手に私の外来へ来られました。“もう私の体にはできる治療はないと言われました。本当ですか?なんとかなりませんか?”
その紹介状には、厳しい状況が書かれていました。私たちのチームにはこの状況を乗り切れるであろうカテーテル治療という武器がありました。しかし、治療したこともなければ使うことも許可されていない治療です。ただ日常生活を普通に過ごしたいという患者さんの熱い期待に答えるべく、様々な障壁をチーム全員で乗り越え、私たちに命を預けてくださった患者さんの治療は大成功に終わりました。翌日には“トイレに行くのもつらくないの!”と。退院時の患者さんの笑顔は今でも忘れられません。コロナ禍という事で色々と大変な局面がありましたが、そのような状況下でお力添えいただいたCedars Sinai病院:中村守男先生、仙台厚生病院:多田憲生先生、ありがとうございました。
重ね重ね、このような賞を頂き、富山大学附属病院循環器センターを代表し、感謝申し上げます。
Young Investigator Award 最優秀賞
Histological determinants of Atrial Bipolar Voltage in Patients with Atrial Fibrillation
高橋 佑弥
(佐賀大学医学部附属病院 循環器内科)
Young Investigator Award 優秀賞
No antithrombotic therapy after transcatheter aortic valve replacement: Insight from the OCEAN-TAVI registry
小張 祐介
(慶應義塾大学病院 循環器内科)
Association of intravenous heparin administration with in-hospital clinical outcomes among hospitalized patients with acute heart failure
濱谷 康弘
(京都医療センター 循環器内科)
Multi-omics analysis and polygenic risk stratification for pathophysiology and precision medicine in atrial fibrillation
宮澤 一雄
(理化学研究所 生命医科学研究センター)
Prophylactic Anticoagulation and Thrombosis in Hospitalized Patients with Clinically Stable COVID-19 at Admission
山下 侑吾
(京都大学医学部附属病院 循環器内科)