2025年度:顕彰受賞者のお知らせ
2025年9月20日(土)、第73回日本心臓病学会学術集会(会場:高知市文化プラザかるぽーと)において、表彰式を執り行いました。ここに受賞の栄に浴された先生方に敬意を表し、今後の一層のご活躍を祈念いたします。
栄誉賞
福田 恵一
(Heartseed株式会社 代表取締役社長)

この度は日本心臓病学会栄誉賞を授与頂き、誠に有難うございます。大変光栄に思っております。私は20歳代の時に自分と同年代の拡張型心筋症の患者を受け持つことがあり、当時は有効な治療法がなく悔しい思いをいたしました。科学の力でこうした難治性重症心不全の方を治療したいと思い、国立がんセンターやハーバード大学の留学で研鑽を積みました。1995年に慶應大学にもどり、それ以後一貫して種々の幹細胞を用いて重症心不全患者を再生医療という方法で治療しようという試みを続けて参りました。末梢血リンパ球からiPS細胞を作出する方法、iPS細胞から心室筋を誘導する方法、残存未分化iPS細胞を取り除き高純度の心筋を精製する純化法、効率的な再生心筋細胞の移植法や移植デバイス等を開発いたしました。これを社会実装するために、大学発ベンチャーHeartseed社を設立し、虚血性重症心不全患者を対象とした臨床治験を実施しております。今後は世界の大手製薬会社Novo Nordisk社と米国・欧州で世界共同治験を実施する予定です。日本発世界初の治療法で、重症心不全患者さんを救命する治療法に発展させてゆきたいと考えております。
教育貢献賞
本江 純子
(菊名記念病院循環器センター)

この度は、日本心臓病学会教育貢献賞という栄誉ある賞を賜り、身に余る光栄に存じます。血管内エコー(IVUS)の黎明期であった1990年にIVUSと出会い、その可能性を信じて診断や治療への応用、そしてより安全で効果的なIVUSガイドPCIの普及を目指して微力ながら活動してまいりました。国内外での活動を通じて多くの医師と知見や具体的使用法を共有し、より効果的で質の高い治療戦略の構築に貢献できたものと思っております。国内ではIVUSだけでなくOCTや血管内視鏡などの血管内イメージングが早期から保険適応となり、多くの患者さんの治療に応用されてきました。これはひとえに、当時保険収載のためにご尽力なさった先生方のおかげです。また最近ではカテーテル治療に従事する女性医師も増加し、放射線被ばくと防護についての知識を共有する機会もいただいています。今後もより多くの医師が正しい放射線防護を実践しつつ、より効果的で安全なPCIを実践できるよう願っております。
本受賞は、今までご指導くださった先生方や共に歩んできた多くの仲間立ちのおかげであり、心から感謝申し上げます。
上田賞
Prognostic significance of baseline low-density lipoprotein cholesterol in patients undergoing coronary revascularization; a report from the CREDO-Kyoto registry [J Cardiol 2024;84:300-310]


この度は名誉ある賞を頂戴し、誠に光栄に存じます。選考委員の先生方、貴重なご意見を頂いた査読者の皆様に感謝申し上げます。
高コレステロール血症は虚血性心疾患の一般的な危険因子であり、脂質低下療法が行われます。ただ治療前からLDL-C低値を呈している患者様も存在しており、予後不良であることが本試験で明らかになりました。悪性腫瘍、慢性炎症やFrailtyなどの関与が隠れている可能性があり、LDL高値だけに着目するだけでなくこの低LDL-C群に対しても注意が必要であることを見出しました。本試験で誤解がないようにお願いしたいことは、“ベースラインの検査値”としては中央値が最も予後が良い、高強度スタチンによる脂質低下療法を否定する試験ではない、ことは強く申し上げたいと思います。
CREDO-KYOTO registryに協力して頂きました全ての病院とその関係者および、本論文を含め日々御指導頂いております木村剛先生、安藤献児先生、山地杏平先生に心より感謝申し上げます。また日々の臨床・研究活動を支えてくれる家族に感謝の意を示したいと思います。今回の受賞を励みに臨床・研究により一層邁進して参ります。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
優秀論文賞
Oxygen inhalation decreases the central venous pressure in adult patients late after Fontan operations [J Cardiol 2024;84:195-200]

この度は、栄えある日本心臓病学会優秀論文賞を賜り、誠に光栄に存じます。
本論文は、成人循環器内科医には馴染みの薄い最重症の成人先天性心疾患であるFontan手術後症例を対象とした研究で、私が九州大学病院循環器内科在任中に行ったものです。心臓カテーテル検査中に経鼻酸素2L/分を投与することで、特にベースラインの中心静脈圧(CVP)が高い症例においてCVPが低下するという結果を報告いたしました。エビデンスの少ない成人先天性心疾患領域において研究成果をご報告できましたことを大変喜ばしく思います。
本研究の遂行にあたり、多大なるご指導とご支援を賜りました共著者であり盟友の山村健一郎先生、並びにご指導いただいた九州大学病院循環器内科・小児科循環器グループの先生に心より感謝申し上げます。
今回の受賞を励みに、今後もFontan手術を受けられた患者さんの長期予後向上に貢献できるよう、より一層研究・臨床に邁進して参ります。この研究成果が、心臓病学の発展、そして患者さんのより良い未来に僅かでも貢献できれば幸いです。
Clinical impacts of CT-derived fractional flow reserve under insurance reimbursement: Results from multicenter, prospective registry [J Cardiol 2024;84:126-132]


この度、日本心臓病学会2025年優秀論文賞を賜り、誠に光栄に存じます。本研究は、私が長年にわたり取り組んできた「CTを用いたFFR測定の臨床的有用性」に関する多施設前向き研究であり、研究責任者として携わることができたことを大変嬉しく思います。
CTを用いたFFR測定は、2018年に我が国で保険償還され、臨床現場において活用されるようになりました。しかしながら、実臨床における有用性や経済的側面については十分な検証がなされておらず、その影響を明確にするための体系的な研究が求められていました。本研究は、その重要な課題に取り組み、多施設共同の前向き研究として実施されたものであり、現時点において初めて、かつ唯一の報告となります。本研究の成果が、今後のCTを用いたFFR測定を活用した臨床診療や医療経済に関する議論に寄与し、患者さんの治療選択や医療資源の最適化に貢献できるものと確信しております。
最後にこの栄誉は、ひとえに本研究にご参加いただいた各施設の先生方のご指導とご協力の賜物です。改めて、この場を借りて深く御礼申し上げます。


この度、日本心臓病学会2025年優秀論文賞という栄誉ある賞を賜り、大変光栄に存じます。本研究では、藤本先生のもと、共同第一著者として研究に携わる貴重な機会をいただき、心より感謝申し上げます。
本研究は、CTを用いたFFR測定の実臨床における診断精度や治療方針への影響を評価した、多施設共同の前向き研究として実施されました。非侵襲的評価法としてのFFRの臨床応用における有用性を、実際の診療現場において検証した点において、本研究が果たす意義は大きいと考えております。
今回の受賞は、ひとえに藤本先生の卓越したご指導、ならびに本研究にご参加いただいたすべての先生方のご尽力の賜物です。この場をお借りして、厚く御礼申し上げます。
今後も、日々の診療に根ざした臨床研究に誠実に取り組んでまいりたいと存じます。この度、日本心臓病学会2025年優秀論文賞という栄誉ある賞を賜り、大変光栄に存じます。
今後も臨床現場に還元できる研究に真摯に取り組んでまいりたいと存じます。
Case Report Award 最優秀賞
Conduction time from left bundle branch pacing to the left ventricular lateral wall in two patients in whom cardiac resynchronization therapy pacemaker was implanted [J Cardiol Cases 2024;30:35-38]


この度は、日本心臓病学会2025年Case Report Award最優秀賞という栄誉ある賞を賜り、心より光栄に存じます。本症例では、左脚領域ペーシングが左室側壁までの伝導遅延を必ずしも改善しない可能性に着目し、2症例に対して左脚領域ペーシング時の左室側壁までの伝導時間を測定したうえで左室リード留置部位の最適化について検討を行いました。LOT-CRTの有効性が多数報告されておりますが、その中で症例ごとの伝導時間評価の重要性を提起できた点で、意義深い報告となったと感じています。本症例報告にあたりご指導・ご協力いただきました増田先生、高橋先生、神山先生、望月先生、古橋先生をはじめ、多くの皆様のご協力に深く感謝申し上げます。この受賞を励みに、今後も臨床と研究の両面からデバイス治療の最適化に貢献できるよう精進してまいります。
Case Report Award 優秀賞
Coexisting transthyretin and atrial natriuretic peptide amyloid on left atrium in transthyretin amyloid cardiomyopathy [J Cardiol Cases 2024;29:261-264]


この度はこのような名誉ある賞を頂戴しまして、誠に有難う御座います。選考委員の先生方、貴重なご意見を頂きました査読者の先生方、指導頂きました先生方に感謝申し上げます。本症例報告は、重症僧帽弁閉鎖不全症を合併したトランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)症例において、僧帽弁形成術施行時の左心耳検体においてトランスサイレチン(TTR)と心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)由来アミロイドの共存を免疫染色により証明した報告になります。従来、心房アミロイドーシスは主にANP由来とされてきましたが、本報告はATTR-CMにおいてTTRおよびANPアミロイドが同一心房内に共在する可能性を示し、ATTR-CMにおける心房細動の発症や進展にANPアミロイドが関与する可能性を示した重要な知見と考えます。今回の受賞を励みに、心アミロイドーシスの臨床・研究により一層邁進して参ります。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
Young Investigator Award 最優秀賞

Comprehensive Imaging of Circulating Platelets for Direct Evaluation of Antiplatelet Therapy in Coronary Artery Disease

Young Investigator Award 優秀賞

Arrhythmogenic cardiomyopathy-related pathogenic variants as independent risk factors for sustained ventricular arrhythmias in dilated cardiomyopathy after left ventricular assist device implantation


Elucidating Inflammatory Mechanisms in Atrial Fibrillation Using Single-Cell TCR Repertoire Sequencing and Proteomics


Phenotyping for Novel Classification of Adults with Fontan Circulation by Machine Learning


Integrating Electrocardiogram into the Mayo Score Enhances Genotype Prediction in Hypertrophic Cardiomyopathy
